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思うこと

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大手人材派遣会社の子会社が「貸し農園」を開設、知的精神障がい者が働けるビジネスを拡大させています。
ある自治体と障害者雇用推進事業として協定を締結するなど、たびたびメディア等にも取り上げられています。

この事業は、一般企業が知的精神障がい者を直接雇用します。
貸し農園を区画割りし、一般企業ごとに貸し出します。
そこで野菜の栽培と収穫の作業をします。
栽培の指導は一般企業が雇用した高齢者が担うという仕組みです。
農園全体で約100名~120名の障がい者が働いています。
一般企業は本人の給与、保険関係費、交通費、それに農園設備負担費、就労管理費、そして人材紹介料を運営会社に支払います。

障がい者雇用は、法の整備後、雇用率、雇用人数共に増えました。
ただし企業が身体的障がいのある方を積極的に雇用した結果であり、知的精神障がい者は後回しになっているのも現実です。
今は身体的障がいのある方に募集をかけても応募がないとも聞いています。

一方、知的精神障がい者の仕事は、清掃、郵便物仕分け、軽印刷、軽作業等(障がい者雇用支援コンサルタントHPより)に留まっています。
残念ですが、企業側の論理からすれば生産性業務と非生産性業務とに分けるのも当然の判断です。
しかも、非生産性業務に赴いた方の労務管理、体調管理等のコストは身体的障がい者を雇用した場合と比べてより負担になります。
貸し農園はそんな企業にとって好都合な場所なのです。

更に新型コロナの影響でリモートワークを取り入れる企業が増え、その結果、知的精神障がい者ができる仕事が減少しています。
貸し農園はその運営会社に障がい者雇用率達成を丸投げできる便利なシステムなのです。
農園運営会社は設備に要した費用の一部を企業に請求できますので、まさにリスクのない「ストックビジネス」なのです。
ストックビジネスとは途中解約がない限り、顧客の積み上げで成り立つシステムをいいます。

ここで障害者雇用促進法の基本的理念と共生社会創りについて説明します。
障がいがある方も一般健常者と共に働き、経済社会を構成する一員となり、その能力を発揮する場所を与えられる。
そして共生社会とは、一般健常者も障がいのある方も同じコミュニティーの中で、共に生き、活躍できる社会をいう。
この点をふまえ「貸し農園」ビジネスを考えてみます。
農園には、一般企業(従業員約100名以上)が雇用した知的精神障がい者約100名~120名が集められ、野菜を栽培します。
そして一般企業(又は農園運営会社)が雇用した高齢者がその指導の役割を担って働いています。
収穫された野菜は、雇用した企業の一般従業員に無料で配布されています。
運営会社は元々野菜を市場に出すことは考えておらず、最初から無料で配布されているのです。
従業員の福利厚生の役に立っていると言いますが、収穫された野菜の行き場がなくなった結果の言い訳にしか聞こえません。
一部は農園内で廃棄されていることも十分考えられます。(無料であっても要らないものは要らない。)

普通の方(企業経営者、執行役員なら特に)なら生産した商品やサービスを無料で配布、提供するなど思わないでしょう。
仮に、一般従業員が生産した商品やサービスを無料で提供したら、そこの従業員はそんな会社は退社するし、会社は即倒産するでしょう。
ではなぜ知的精神障がい者が生産した野菜は無料なのでしょうか。
「知的精神障がい者が生産したものは市場価値ゼロ」と言っているのと同じなのです。

このビジネスの問題は
1.知的精神障がい者が生産した野菜を市場価値ゼロにしている。
2.雇用された障がい者だけが1ヶ所の農園に集められている。
3.市場価値がない野菜を生産している障がい者は経済社会を構成する一員であると考えて
AAA(思って)いない。
4.そこには健常者と障がい者が一緒になって働くコミュニティーはなく、当然一般の方々
AAAとの交流、コミュニケーションの機会はほとんどない。
5.農業指導者(未経験でも即採用)として働いている高齢者は市場価値ゼロの野菜を作って
AAAいる。

しかし、様々な問題があったにせよ農園を利用している企業側の事情は十分に理解できます。
法定雇用率2.2%(令和3年4月から2.3%)達成の義務を課せられていますが、そもそも知的精神障がい者に適している社内業務がない。
労務フォローができるスタッフがいない。
こんな事情を抱えている企業はどうしても雇用率を達成することが難しいのです。
仕事がないのに、雇用人数だけを増やすことはできない、というのは当然なのです。
それを企業努力が足りないと言って無意味な「業務の切り出し」をアドバイスする障がい者雇用支援コンサルタントの言いなりになるだけなのです。
結果、生産性に繋がらない雇用になってしまいます。

「知的精神障がい者の方にお任せできる業務がない」
「業務の切り出しはもう限界」
「リモートワークがすすみ、フォローをしてくれる人がいなくなった」
「人事、総務担当者が負担を感じている」
このような課題を抱えている企業様は発想を変えてみませんか。

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